バイオガス発電では原材料に化石燃料を使わず有機性廃棄物などを用いることから、発電時に新たなCO2を排出しないクリーンなエネルギー源といえます。
有機物から燃焼や炭化によってエネルギーを取り出す場合には、水分を蒸発させる必要があるため、食品残渣や家畜糞尿など含水率の高い有機物は好まれません。しかし微生物の作用を活用するバイオガス発電は、含水率の高い有機物からエネルギーをほとんど使うことなく効率的にバイオガスを生成することができる技術です
バイオガスを回収した残渣(残りかす)は、エネルギー成分は無くなる一方で窒素やリンなどの肥料成分はそのまま残っているため、非常に質のよい液肥として利用することができます。バイオガスの生成過程で病原菌なども死滅し、また嫌な臭いも大幅に低減されます。
それだけメリットのあるバイオガス発電が、これまで普及してこなかったのはなぜでしょうか? バイオガス発電は、図に示すように、太陽光発電や風力発電など他の再生可能エネルギーと異なり、任意の地域において「物質を循環させる」ことが必要となります。循環の輪を作ることで、それぞれのステークホルダーにとってメリットが生まれ、すべてのステークホルダー間でWin-Winの関係を構築することができます。その一方で、この循環の輪の一部が途切れると、事業が立ち行かなくなるリスクをはらんでいるともいえます。
国内でもこれまで既に多くのバイオガス発電施設が導入・稼働していますが、うまく稼働しているプラントばかりではありません。プロジェクトを成功に導くには、事業計画の段階から多面的に検討を進めることが重要です。
木質バイオマス発電事業と同様、バイオガス発電においても、安定的な原料調達は事業成功に必須な要件の一つです。
有機性廃棄物の収集計画を実地に即さず机上で見積もった結果、実際に運転を開始しても原料となる有機性廃棄物が思うように集まらないケースが散見されます。このような場合、維持管理コストがかさみ、返済原資の確保に窮した結果、事業継続が困難となることがあります。
日本では、欧州と異なりバイオガス発電施設を専門に作っているプラントメーカーが多くなく、プラントの設置コストが割高になりがちです。また、プラントの一般的な仕様や相場のような情報も出回っておらず、プラントメーカーによって価格がまちまちであることも多いです。バイオガス事業へ計画や投資経験の少ない事業者(投資家)にとっては、プラントの適正な仕様の決定や価格の妥当性に関する評価が難しいことも、事業参入や投資判断の障害となることがあります。
北海道では、バイオガス発電から出た消化液は液肥として畑に撒く文化が根付きつつありますが、その他の多くの地域ではまだまだ液肥としての利用に関するノウハウも理解も不足しており、施設を作っても思うように液肥が利用されずに処理に困る事例があります。
原料の性状にもよりますが、液肥そのものは一般に良好な肥料として活用でき、耕種農家としても肥料代の削減に繋がることから、プロジェクトの成功のためには、地域で液肥利用にあたっての理解を深めることが肝要です。
また、都市近郊など液肥利用が困難なエリアにおいては、発生した発酵残さ(消化液)の一部を水処理することも選択肢になります。ただ、消化液の水処理は技術的な難易度は高く、また処理コストも高くなりがちであるため、計画段階から安易なアプローチを選択すると、事業収支に大きな悪影響を与える可能性があります。
固定価格買取制度が導入されるまでは、プラントの建設に伴う補助制度は数多くあっても、運転に伴う支援策というものはほとんどない状況でした。そのため、メンテナンスや保守管理費用を過度に削減してしまい、かえってプラントの寿命を縮めてしまう事例もあります。特に、最も可動部の多い発電機(ガスエンジン)まわりはメンテナンスが重要です。国産のバイオガス用発電機はメンテナンス面で安心感がある一方、海外製に比べて割高であることが多いです。また、海外製とひと言でいってもその実態はピンキリで、国内でも多数の導入実績のあるものもあれば、安価である一方でパーツの補充体制やメンテナンス体制が整っていないものもあります。
バイオガス発電事業では、地域での資源循環システム構築や環境問題への解決といった社会的なテーマを包含することも多く、それゆえにステークホルダーとの関係性の在り方をわかりやすく整理し、多くの方々にご理解・ご支援頂くことが重要となります。わたしたちは、事業それぞれの状況に応じて、事業コンセプトや施設概要などを見える化し、関係者の方々の理解醸成を促すお手伝いを致します。
事業の概要が決まり、一定の実現可能性が見込まれる場合には、事業採算性の評価を行う上で最も重要なプラント仕様の決定および建設費の算出の段階に移ります。
自社や関連会社などで建設を想定される場合には、共同でプラント仕様の策定を実施したり、不足しているパートナーの抽出・選定作業をご支援致します。
特定のプラント建設(EPC)会社が決まっていない場合、見積作成を行うためのプラント仕様を作成した上で、EPC候補企業に打診してプラント建設費の見積取得を行い、事業者と共にEPCの選定支援を行います。
EPCの仮決定、およびプラント仕様や各種コストの見積取得が終了した時点で、最初の事業採算性評価を行います。
この段階では、投資対効果が見込めるか否か
EPCが決まり、具体的なプラントの仕様や投資額が